ルアーと水泳の意外な共通点 =水泳コラム-その2=
泳ぐ時に重心を感じることの重要性はこちらで書きました。
その泳ぎの中の重心のイメージと釣りで使うルアーに意外な共通点があるなと思ったので、ちょっと書いてみたいと思います。
重心移動式ルアー
趣味で少しだけ釣りをします。
でも、いろいろ仕掛けやえさを準備するのがめんどうなので、もっぱらやるのは海でのルアーフィッシングです。
狙いは主にシーバス(スズキ)。
道具をもって釣り場(岸壁が多いかな)に行き、ルアーをつけて、即スタート。このお手軽感がいいですね。
いろいろ試行錯誤しても、反応がないなと思ったら別の場所へ移動。
運良くヒットしたら引きを楽しみます。リールから無理矢理糸が引き出されていく締め込み感がたまりません。
そこで、ルアー(疑似餌)を使う訳ですが、最近のルアー(とくにミノーという種類のもの)には割と当たり前のように「重心移動式システム」なるものが組み込まれています。
図を見てもらえれば分かりますが、
プラスチック等のボディの中に、前後に自由に動くおもりが入っているというものです。
何の為にそうなっているかと言いますと、
・投げるときはそのおもりが尻尾側に移動し、遠心力を増幅させてルアーの飛距離をのばします。
・引いてくるときはそのおもりが中心付近に移動し、水をしっかり受けてルアー本来のバランスとアクションを行いやすくします。
ルアーと水泳時の姿勢
この重心がボディのなかで動くというメカニズムが、泳いでいる時のバランスとよく似ているなと思う訳です。
まず、人間には体の性質上持っている一番重い場所=重心が存在します。
一般的には重い筋肉群が集まっている腰付近にそのポイントがきます。
つまり、水平に浮いた時にここから沈んでいこうとしますし、このポイントを支えてやればバランスが取れる訳です。
この体が持っている性質としての重心位置は変わりませんが、運動の中でその時その時のバランスの取れるポイントは変わります。
こちらで書いたように、姿勢のバランスをしっかり取ればこのバランスポイントを少し前にキープすることも可能です。
また、ストロークやキック、息継ぎなどによってこのバランスが取れるポイントは変化します。
実際には水中で下から支えられる訳ではありません。
このバランスが取れるポイントは泳いでいる時にはその時に一番沈んでいこうとするポイントとして体感できます。
この一番沈もうとするポイントは当然泳ぎの中で刻一刻と変化してゆきます。
例えば、極端な例では飛び込みの直後は、蹴り足の勢いと落下のエネルギーで頭から斜め前へ沈んでいきます。
これは極端な例ですが、実際の泳ぎの中では、主に胴体の前後左右にこのポイントが動く感じです。
ちょうど体の中が空洞になっていてそこに鉛のおもりが入っていて自由に動くルアーのようなイメージです。
重心を感じ取るとは、泳ぎながらいま一番沈もうとしているポイントを感じ取るということです。
泳ぎの中で手足を上下・前後・左右に運動させることによって、この一番沈もうとしているポイントは刻一刻と変わります。
例えば
前後でいえば、
当然左右でも、
なので、この運動のなかで変化する一番沈もうとするバランスポイントをなるべく腰より前にキープすることがよりスムーズな泳ぎの大前提となってきます。
このことを頭でイメージして感じ取らない限り、どれだけ手足を一所懸命改善しても一かきですーっと進む泳ぎは出来ません。
逆に言えば、この自分のバランスのイメージがしっかりあって、それを感じ取ることが出来れば、適当に手を動かしていれば割とスムーズな泳ぎになるものです。
そして、自分で手足の動きを改善するときも、一つのはっきりとした基準を手に入れることができるのです。
つまり、「今の手の動きは重心がぐっと前に乗ったからいい感じだ」とか「重心が腰にあって後ろにあるのを無理矢理引っ張っていく感じだったからいまいちだ」みたいな感じです。
具体的に体をどう使うかという技術論の前に、自分の体のバランスをきっちりイメージして感じ取ることの方が優先順位が高いと思います。